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数学科2 年生へ

これから、数学科に入ってどのように勉強すれば、自分に力がつくかということについて説明する。

1. 自分で、自分に力がつくようにものごとを進める必要がある。
2. 人の能力はかなり時間をかけてのびていくものなので、とくに大学のときだけ延びるものではないのだが、10代後半から20代に基本的な考え方、力がつく。

例年、数学の新入生に、大体 4/5 の人が数学を理解しないで卒業するといってきた。この事実を知らせることは、刺激を与えることにはなるが、理解できる道を示唆することにはならない。そこで多少とも示唆する必要があるかと思い、以前より丁寧に説明する。
「聴いていれば、はじめはわからなくても、だんだんわかるようになる」といわれる先生がいらっしゃるが、これは気休め以外のなにものでもない。聴いたことを、集中して考えた後に、だんだんわかるようになる、のであって教室に来てただ座って聴いているうちにわかるわけではない。 各々の講義の後、復習の際、次のことを実行することが大切である。

(1) 定義を覚える。
(2) 例を3つあげ、それが定義を満たすことを確認(証明)する。似て非なるものを、1つ、2つあげ、それが定義を満たしていないことを確認(証明)する。例を自分でつくることが大切である。ほとんどの人は教科書に書いてある例、先生の教えた例以外の例を知らない。
(3) 証明の中で、仮定、定義がどこでどう使われるかに注意する。
「後で勉強すればわかるようになる」というのは能率が悪い。最初に定義が頭に入ってから、長い時間の後にわかるようになるので、一度、定義を頭に入れることが大切である。

何ができるようになるか? ものごとの論理的な筋をとらえることができるようになる。 実際、世の中でものごとを論理的に処理できる人の数は限られている。まだわかっていないものを考え続ける場合、ものごとが論理的に整理されていることは大きな武器となる。また一般に世の中のことは論理的にできていない。しかし、多くの人の存在する社会では、ものごとに筋道をつけておく必要があり、社会の構造の論理的側面を把握しておくことは指導的立場に立つ人には大切なことである。その意味でも論理性は大切なものである。

数学には実験がないので楽だと思っている人がいるが、実験はある。それは各人が時間をかけてよく考えることにある。実験装置が、個々の頭の中にあるので、これがスムーズに動くように、毎日手入れをしておく必要がある。装置のシステムは入れ換えたり手入れをすることにより、高性能にもなるし、動かなくなることもあるので注意する。 そのため毎日、集中して考える時間を最低3時間もつ。授業時間を含めてもよいから毎日である。授業時間でも眠っている時間は含まない。これを続けると、自分でものを考え続けられるようになる。念のためつけくわえるが、毎日ということは、毎日ということである。これは、ものを自分で考えつづけられるようになるための訓練で、1年やれば、かなりの効果がある。

2008年4月1日 江田 勝哉 (2010年4月改訂)


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著作:2008年4月1日 江田 勝哉